嗅覚と味覚と触覚

味覚がなくなると

わたしは、10年前に中咽頭がんになりました。

ステージ4(リンパ腺に転移)と言われ、余命も
わずかと思いましたが、闘病の末、何とか生きて
います。


中咽頭がん

その時の入院時に、抗がん剤を服用しているからか
放射線を浴びているためなのか、ある日突然、味を
失いました。

中咽頭がんでも食べ物の制限はなく、食事のスケ
ジュールにあわせて、その日の昼食や夕食を外食に
することはできました。

主に、病院食で得意でない料理の時には、たびたび
好きな中華を買ってきては楽しんでいました。

その日も、中華丼を購入し結構熱いので冷まして
からスプーンを使い口に入れても、味もそっけも
ないんです。

なんだと思い、続けて口にしましたが、味はあり
ません。なんと表現をしていいのかもわかりません。

すぐに、病院の売店に行き「梅干し」を買って食べ
てみましたがやはり、味を感じません。


梅干し

すぐに先生と連絡を取り、味がなくなったことを告げ
ると先生は、「よくあることです」と言い、その人に
よって出る人と出ない人がいるそうです。

私「これは治るんですか先生」と質問すると
先生は「治る人と治らない人がいるので何とも言え
ません」とはっきり言いました。

ガーンと頭を殴られたようでしたが、がんだから仕方ないと
自分に言い聞かせました。

が、数日後に、今度は「熱いもの・冷たいもの」が口に入る
とその場で、しゃがみ込むほどの口の中に痛さを覚えました。
(実際にしゃがみこんでしまいました)

わたしたちが普段「味」と感じているものは、味は
舌だけで感じとっているわけでなく「味」はすべて
舌で感じる狭義の味覚と、触覚、そして嗅覚が共同
で作りあげている。

そばやうどん、パスタなどの「コシがある」と感じ
たりパリパリしている、しっとりしているといった
食べた感覚を楽しんだりするのは触覚のおかげです。

 

ポテトチップスが乾燥していたり、湿気を含んでい
るときにかなり味の違いを感じます。
この時も触覚だけでから生まれています。

また「味」のほとんどの部分は、レトロネーザル(口腔香気)
によって生じていると言っていい。

レトロネーザルとオルソネーゼル

口中香・呼気に伴う風味の感覚で「戻り香」「口中
香」「あと香」などと呼ばれている。

食べ物、飲み物は一度喉を通ると鼻に戻ってくる香り
があり、これは人間にしかない嗅覚能力です。

普段の鼻で嗅いだ吸感覚・吸気と伴う感覚をオルソ
ネーゼル(鼻腔香気)「たち香」などと呼んでます。

人間の体の構造はよくできていて、肺への気道と
胃への食道が、喉で交差しているため、食堂に入
っていく食べ物の香りが、喉から鼻へ抜けていく
空気の通りによってにおいとして感じるわけです。

サイダーやラムネなどを飲むとゲップが鼻を刺激
しながら抜けていくのがわかりますね。


ラムネ

鼻をつまんで食べ物を食べても、そっけない味に
感じるのは、この喉の構造が原因です。

嗅覚を失った人が「食べ物の味がわからない」と
言うのはそのためです。

私の場合は、においをかぐということは、しなか
ったので気が付かなったのですが、やはり嗅覚
問題だったのでしょう。

どの部分が、どの感覚によって作られたかは、明確
に区別はできないようですが、これは視覚や聴覚か
らも影響を受け、さらにワインの色やかみ砕く時に
聞こえる音などで、最終的にどう感じるかを大きく
左右するからです。

人間の5感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)の中で
匂いだけが、感情、本能を司る「大脳辺縁系」に直接
伝達されます。

赤ちゃんの嗅覚は大人以上で、母乳やお母さんのにお
いを嗅ぎ分けられるように、生まれたての赤ちゃん
嗅覚は十分に発達しています。

多数の感覚が共同で仕事をしているおかげで私たちは
この世界を生きていけるんですね。

参考:JTB総合研究所、感覚の連携(バリー・Cスミス著)、JOMFワイン講座