浅草寺本堂扁額の新調

扁額(へんがく)とは

建物の内外や門・鳥居などの高い位置に掲げられる
であり、看板です。

主には、その建物の寺社名であることが多いが、建物
にかける創立者の思いなどを記すこともある。


扁額

扁額は神社、寺院、城門、茶室などの伝統建築だけで
なく、学校、体育館、トンネルなどの近代建築でも掲
げられている。

今回は、先日浅草寺の本堂に大きな扁額が新しく掲げ
られました。一部始終を見ていたわけではありません
が、工事の土台組や立派な扁額に感動したのです。

隔月に浅草寺から無料で配布される小冊子「浅草寺」
にそのことが掲載されていましたので抜粋してお知ら
せします。

それは南部白雲本杉彫刻工房三代目の南部白雲師
浅草寺本堂扁額を彫る」というタイトルで掲載さ
れていました。


「彫刻の里」井波

日本遺産に登録されている富山県栃南(となみ)市
彫刻の里」と呼ばれる井波は人口1万人ほどの小
さな町に200名ほどの彫刻師がいるところです。

南部白雲師は、浅草寺の執事長はじめ御一行が砺波市
の観音講参列の後に井波や世界遺産の合掌集落を案内
し井波が取り組んでいる木彫サインの話などをしたご
縁で本堂に掲げる扁額の作成由来が届いたそうです。

浅草寺本堂の扁額は戦争で焼失し、その写真を仮に
掲げていました。

早速、浅草寺におもむき現場確認と、長さ4m、幅
1.3mもの書がひろげられていました。

その写真には、豊道春海【ぶんどうしゅんかい】
(1878~1970)という書の大家が「施無畏・せむ
い」と揮毫【きごう】(毛筆で絵や文字を書くこと)
された大迫力の扁額の原書でした。

これならば、日本産の欅【けやき】の1枚板で彫り
上げたいと、まずは材料探しからスタートしました。

納得のいく欅が見つからずに5か月が経過したある日
観音様のお導きか九州の福岡に30年眠っていた良材
があると連絡があり、まさに探していた材そのものを
確認したのです。

 

「施無畏・せむい」という言葉は

恐ろしいことを取り除き衆生を救う観音様の御心を表す
お言葉です。


浅草寺「施無畏」

制作するにあたり南部白雲師は

  • 施無畏」の言葉に込められた意味をご参拝の方に分か
    りやすく伝えること。
  • 大迫力の書をそのまま表現すること。

この2つをを思い構想を練りました。

参詣者の目に「施無畏」の意味を分かりやすくなる
ようにするにはどうすればよいか考え、絵様の彫刻
を扁額の左右に取り付ける意匠を考えてみました。

蓮華には恐れることもすべて浄化してくれる霊力が
あるとされている。その蓮華の花園に人々が恐れる
物事を散りばめれば、その恐ろしいことが清められ
ることを表せるのではと考えたのでした。

絵様の彫刻の意味

  • 地震を表した大鯰には、浅草寺の山号の金龍が抑え
  • 邪心は邪鬼が蓮華に押しつぶされ
  • 薬壺を蓮華の上に掲げることで、疫病を封じる
  • 衆生を救う蜘蛛の糸を蓮華に垂らした

この構想は快諾を得て彫刻に取り組みます。

 

一般的な扁額の彫り込みは三分(約1㎝)です。

今回の扁額は大きな欅材で、これに負けないように
普通ではありえない深さの一寸八分(約5.5㎝)
彫りこみにした。

そして、原書に忠実に勢いよく飛び散ってる墨の痕
跡は米粒ほどの小さなものまで彫り込んだ。

この先、何百年と掲げることを考え、彩色はしない
素木造りに仕上げ、絵様の彫刻部分は色調を考え、
色の違う銘木で彫り込んでいます。

  • 地震の大鯰は白っぽい
  • 金龍は深みのある神代欅
  • 邪鬼は不気味な黒い縞黒柿

など、全部で15種類の木を使用しています。

本堂への取り付けも、通常は受け金具で支えるのが
一般的ですが、まるで空中に浮いているように見え
ることで、書の一部が受け金具で隠れないようにし
ようと配慮しました。

総重量は約700Kgあります。

南部白雲師は、制作の様子を浅草寺の方々にもご覧
いただき、試行錯誤の職人仕事をご案内しています

携わったすべての職人の名前を裏に記され、今回の
ご縁にたいへん喜んでおられます。

南部白雲師の職人気質はさすがです
職人仕事も一生懸命作ったものは人の心を温め癒す
力が強いと信じています。

今回、掲載されたことで、その内容と制作にあたっ
ての大変なご苦労が身に沁みました。

あらためて、浅草寺の本堂の正面に掲揚されている
扁額を眺めてみたいと思います。

あなたも浅草寺にお寄りの節はこの投稿記事を思い
出してご覧いただきたい。

 

参考:浅草寺(浅草寺教化部 発行)南部白雲著、Wikipedia