保有効果が現状維持・決定回避の法則を生む
難しい「断捨離」
断捨離の文字が賑わって我も我もといらないものは処分する。
1年着なかったものは、思い切って捨てるなどのルールを自分で決め、与えて実行する。
自分も例外になくやってみました。
結構、処分はできたものの、やっぱり実行の途中で、これはもったいないなとか、まだまだ使えるなとか、もう少し残しておこうとルールーを外したことが多かった。
この心理は、誰にでもある「保有効果(Endowment effect)」が働いたからです。
「保有効果」とは、
自分が所有するものに高い価値を感じ、手放したくないと感じる心理現象のことをいう。
引用:コトバンク
新品をもてることより、今持っているものを失うことの方を、大きく感じる心理状態のことです。
古くなった車でも、本人は新車よりもよく磨いたこの車の方が価値があると思ったりします。
「大学のロゴ入りマグカップ」の実験
プロスペクト理論でおなじみのダニエル・カーネマンとエイモス・トヴァルスキーの実験です。
大学のロゴ入りマグカップを
- Aグループの学生に与えて
「いくらなら売るか?」と聞き - Bグループの学生には
「いくらなら買うか?」と聞きました
すると、Aグループの学生は
「7.12ドルなら売る(平均して)」と答え
Bグループの学生は
「2.87ドルなら買う」と答えたのでした。
驚くことに、この実験では自分が保有しているマグカップの主観的価値が、他人と思っている価値より2倍以上も高いという、「保有効果」が実験で確認されたのです。
この保有効果は、いまこの状態をよっぽどのことがない限りは、変えたくないという「現状維持の法」を生み出すことにつながっていると言えます。
「現状維持の法則」とは
人は特別な理由がない限り、現状を維持して過去と同じ選択をしやすいという。
引用:beeha
スーパーやコンビニで買い物をして、毎回、同じ食品や同じメーカーの商品を買ったり、同じブランドの靴や洋服また、似たような色やデザインを選んでしてしまったりするのは「現状維持の法則」が働いているからです。
外食にしても、一人ならつい、いつも行く牛丼チェーンや中華屋さんに足が向きます。
お店に入ってからも、いつも同じメニューを頼む現状維持のリピーター客が大勢います。
これは「決定回避の法則」も絡んできます。
「決定回避」の法則
選択肢が多くなりすぎると、その中から一つのもの(商品)を選んで決定することを避けがちになる。
引用:beeha
社会心理学者シーナ・アイエンガーの論文「(選択と不満)Choice and itsDiscontents」に掲載された「ジャム実験」で証明されたといわれています
「ジャム実験」
「24種類のジャム」と「6種類のジャム」を日にちを変えて売った所、6種類のジャムの方が実際の購買率が高いという結果がでたのです。
「24種類のジャム」は、試食率は約60%で高かったのですが購買率は約3%に留まりました。
一方、種類を減らした「6種類のジャム」では試食率こそ約40%でしたが、購買率は約30%と非常に高かったのです。
この実験で、多すぎる選択肢やとても複雑な選択肢を与えられると、興味を抱いても実際には決定(選択)しない心理になりやすいことが判明した。
「保有効果」が生まれ、「現状維持の法則」や「決定回避の法則」が働く原因は次の3点が上げられている。
- 自分が持っている物にほれ込み「愛着」を感じる今、持っている物を失うことを強く意識する
- 自分の考え方は相手も同じだと思う
上記の通り、触ったりするだけで愛着は生まれますね。
2.は、プロスペクト理論の損失回避になります。
3.については、誰にも通用するはずという認知バイアスです。
いずれにしても。行動経済学の理論に基づいているようです。
これで各メーカーがビジネス展開をして、これでもかと応用しています。
例えば
- 洋服を試着して保有効果を高め購買率を上げる
- サプリメントなどの無料お試しサービスで継続をしてもらう
- Apple,Huluなどのミュージック定額配信でも無料期間を設けて
保有効果による継続利用を増加させている - 返金保証などで購入リスクを下げ、手に取ってもらう
- 返品OKの返報性の原理も働いてよく使われている手法
ビジネスに限らず、家庭内の愛用品であったり、恋愛感情でも、「保有効果」で「新しいパートナーを手に入れる喜び」よりも「今のパートナーを失う苦しみ」を大きく感じるので、恋愛・結婚には、早く相手を手に入れた者勝ちの傾向があるのです。
まとめ
「保有効果」は自分の持ち物の価値を実際よりも高く感じ、手放したくないと思う心理効果です。
そして「現状維持の法則」もつながります。
いろんな場面で使われ、利用する事ができます。