刷り込みの効果と日本人は
刷り込みの効果と日本人
「刷り込み」は、オーストリアの動物学者コンラート・ローレンツ(1903~1989)が動物生態学に導入した言葉です。
ローレンツは雁のヒナが卵からかえって最初に見たものを自分の保護者と考えてついて歩くことを実証した。
この、親と信じてしまう現象を1937年にローレンツはこの現象が、まるでヒナの頭の中に一瞬の出来事が印刷されたかのようだとして「刷り込み」と名付けた。
それと似たようなことが人間社会にもある。
それぞれの文化には、その文化圏独特の「根本的な感じ方」がある。
それが大昔に「刷り込み」されたからと考えられる。
アメリカの言語学者のエドワード・サピアは各国の言語には理屈では説明できないさまざまな要素があるにもかかわらず、その構造を頑固に持ち続けている。
それは、その言語が特定の地域に住む人々の間で発生したときに「刷り込み」があったからだろうと考えている。
刷り込みは言語だけでない
日本人がしみじみと草むらや時には家の中まで入り込み、秋の到来を感じさせる虫の音も欧米人にはただの雑音としか聞こえないという。
それも「刷り込み」のされ方が違ったからだということです。
また、京都の竜安寺の石だけで創作されている庭の風情も、多くの欧米人には理解しがたいのではないだろう。
そのように日本人に「刷り込み」された最たるものは何だろうか。
それは、神話と古代伝承だと言われている。
古代ギリシャにおいてもローマにも神話は、あった。
しかしギリシャ神話はキリスト教やユダヤ教イスラム教の到来とともに滅亡し、遠い神話の世界となってしまったのです。
日本では現在でも神話は生き続けるのです。
近代的科学や歴史考証からは完全ではない神話ですが「理解し得ないものの力」を感じ日本独自の想像の世界に入り込み、次代にも伝えていく。
ご存知「古事記」は、この世が混とんとしている状態であったとき葦が芽吹くように神々が生まれたと始まっています。
やがて、神代七代の最後に伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が生まれ、伊邪那美命(いざなみのみこと)と結婚して夫婦となり、日本という国を生んだ。
淡路島、四国、隠岐島、九州、壱岐、対馬、佐渡島、それに本州の八つの島で「国生み」(くにうみ)です。
しかし、大地が荒涼としていたため、海の神山の神、木の神、土の神、風の神、水の神、穀物の神などを生んだ。
そして、天照大神(あまてらすおおみかみ)を生んだと記されています。
天照大神は、今でも伊勢神宮に祀られています。
神話の時代が現代まで続いているところに、日本の特色があり、神話と古代伝承の世界が今でも太古の時代と同じように生きている。
民族的な「刷り込み」によることで、日本の「強み」と言っても過言ではないと考えます。
日本は島国であることから、特殊な日本だけの文明を築く事ができたのでしょう。
参考:日本人論(渡部曻一著)