死を意識するとスクルージ効果
まず
英国の文豪チャールズ・ディケンズの中編小説「クリスマス・キャロル」という物語の概要をお読みください。
「クリスマス・キャロル」
この物語の主人公は、エベネーザ・スクルージという初老の商人で冷酷非情で守銭奴でエゴイスト、人間の心の暖かみや愛情などとはまったくの無縁の生活を日々過ごしている人物です。
そのスクルージがクリスマスの前日の夜に、幽霊の訪問を受けて、金銭欲や物欲に取り付かれた人間がいかに悲惨な運命となるか、生前の罪に比例して増えた鎖にまみれた自分自身を例としてスクルージに諭し、死にざまの未来を見せられます。そして、「こんな死に方をするのはゴメンだ」と幽霊達に感謝と改心の誓いをし善行に励むようになった。
このような物語で「クリスマス・キャロル」の主人公スクルージを由来とした「スクルージ効果」
という専門用語があります。
「スクルージ効果」とは
「死に関連することを考えていると、人はなぜか良いことをしたくなる」
という心理効果を指します。
ドイツにあるルードヴィッヒ・マクシミリアン大学のエヴァ・ジョーナスは葬儀場の前のような場所に来ると誰でも無意識のうちに「死」について考えてしまうのではないかと仮説を立てた。
アンケート調査
この仮説を検証するためにジョーナスは、葬儀場の前、葬儀場から150m離れたところで歩いている人に声をかけて、アンケートに答えてもらった。
アンケートの内容は10のチャリティ活動について
「どれだけ有益だと思いますか?」
と聞いてみました。
それぞれの活動について1から10点で採点をしてもらい合計では100点満点になります。
その結果、葬儀場の前でアンケートに答えてもらった人たちの平均は50.75点でした。
そして、葬儀場から離れた視界に入らない150m離れたところで同じアンケート調査に答えてもらった人たちの平均は43.93点でした。
この結果から葬儀場が目の前にあると人は何故だか善行を積みたいという気持ちが強くなるのか「チャリティ活動はとても重要だ」という回答を多くするようになった
この実験では、こんなことがわかったのです。
誰でも、どんな人でも「自分の死」というものを考えさせられると、社会に向かって何か貢献したいとか、他人に親切したい、チャリティーにも参加したいという気持ちが生まれるようです。
今回の記事は「スクルージ効果」という、心理学用語から投稿しました。
けっして「死生観」の話ではありませんのでお間違えなくお願いたします。
スクルージ効果は、世間に貢献したいという気持ちが強くなることです。
その意味では、アメリカの大富豪は若い頃のあくどいことをしていたとされていても、晩年は莫大な財産を寄付し図書館などを立てたりしています。
「鉄道王」と呼ばれたアンドリュー・カーネギーも、マイクロソフト社の創業者のビル・ゲイツも半端ではない寄付金を提示しています。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾスが離婚し、財産分与額が360億ドル(4兆円)に達したことで話題を呼びました。
その別れた妻マッケンジー・ベゾスが、財産分与額の半分を慈善団体に寄付することで、またまたびっくりです。
「私には分不相応の額、慈善事業のために使いたい」マッケンジーが今回の寄付にあたって表明したコメントです。
素晴らしい言葉ですね。
参考:もっとすごい心理学(内藤誼人著)、Wikipedia、