偶然がつくりだす味わい「窯変・ようへん」
窯変(ようへん)とは
窯の中で陶磁器に生じる色相の変化のこと。炎、酸素の状態や釉の性質などに起因するため、予測できない。
引用:工芸用語集
窯の炎による現象であることから、「火変わり」とも呼ばれます。その色の重なりは時に模様を形成し、陶磁器の色彩をより深く、味わいのあるものにしています。
英訳では、accidental coloring(偶然生じた色彩)と訳されています。
陶磁器とは
陶磁器は、自然採取される粘土や、もしくは陶石(とうせき)と呼ばれる石を砕いた原料で形を作ります。そして釉薬(ゆうやく)とよばれるガラス質の原料をかけて焼いた品々を陶磁器といいます。
陶磁器を焼くときは窯に入れて、高温で焼成(粘土を 窯 かま で加熱して石質にするなど)すると窯の内部で化学物質が反応しあい、陶磁器に予想できないさまざまな色相のものが生まれます。
したがって、作る人たちはワクワクしながら、どんな色あいで焼きあがるかを楽しみにしているわけです。
そのことを考えると英訳された ”偶然.生じた色彩” は訳としてはピッタリだと思われます。
特に、薪(まき)を燃料とする薪窯においては、このような傾向が強くあらわれ、ゆらめく炎は色とりどりな陶磁器を生みだします。
陶磁器は釉薬(ゆうやく)をかけて焼くといいましたが、釉薬を使って焼いた陶磁器を施釉(せゆう)作品といいます。
釉薬には、たくさんの種類がありますが3つの基本的な役割を持っています
釉薬の役割
装飾・・・多種多様な色・釉調を表現することができます。
引用:陶磁器とは
強度・・・ガラスでコーティングしてより丈夫になります。
汚れにくい・・・水・汚れを吸収しにくくなります。
例えば
- 銅釉を使った織部焼(おりべやき)なら、窯の中の酸素が十分な場合(酸化雰囲気:さんかふんいき)、銅の成分が緑色に発色します。
- 同じ銅釉を用いた辰砂(しんしゃ)であれば、窯内部の酸素が欠乏した状態(還元雰囲気:かんげんふんいき)で焼成します。その結果、銅の成分は紅色に発色します。
釉薬が似通った成分でも、窯の内部環境(酸化か還元か)によって色彩に変化が生じます。
色の変化の窯変ですが、釉薬を使わない、無釉焼き締めの作品にも窯変が生じます。
そのまま土で焼く備前焼や信楽、伊賀の焼き締めなどがそうです。
燃料である薪は窯の中で燃えて灰になり、灰は窯の炎で舞い上がり作品の表面に降りかかります。
その灰が高温で溶けてガラス質に変化し釉薬と同じ役目をして、作品の表面に色の変化をもたらします。
また、釉薬の組成(そせい:構成する成分のこと)は、
- 塩基性酸化物
- 中性酸化物
- 酸性酸化物
に大別されます。
1~3に「~酸化物」とありますが、これは大気中にあるため酸素と結合した結果の産物です。
ここでは、このような成分が焼成のときに窯の中でそれぞれの役目を果たしますが文書にするには難しいので、これまでにとどめます。
このように、窯変は施釉・無釉を問わず複雑な色相で陶磁器を彩ります。
織部や辰砂のように緑・紅色など色そのものを表現する窯変。
胡麻や桟切のように、色とその模様を装飾とする窯変など、奥が深く最終的にどのような窯変になるかは、窯出ししてみなければわからない。
しかし、仕組みを活かし作り出せることもありうるのです。
こんなことを考えながら作品を鑑賞するのも一考ですね。
参考:陶磁器