海外ではジャパンとよばれる日本の冠たる漆工芸
「漆黒の闇」(しっこくのやみ)、「漆黒の髪」(しっこくのかみ)などと表現する「漆黒」とは、辞書よると
「 黒漆(くろうるし)を塗ったように黒くてつやのあること。また、そのさまやその色。」
引用:日本国語大辞典
と書いてあり、”まっくろ” の表現もしています。
単なる黒ではなく、深みがある黒や光沢のある黒をあらわす時に使っています。
この漆や漆塗りの器は海外では「ジャパン」とも呼ばれ、日本を代表する伝統的な工芸品のひとつとしているのが漆工芸です。
世界には漆器収集家が多く、また、深い知識をお持ちの方も少なくないようです。
「漆・うるし」って
漆の木の表面に傷をつけ、そこから出てくる乳白色の樹液を採取したものが漆液の元になります。
この樹液を濾過したものを「生漆(きうるし)」と呼び、ウルシオールを主成分とした、一般的な漆のもとになり天然樹脂塗料および接着剤となる。
日本の他にもベトナムなど東南アジアになどにも漆と呼ばれるものが存在はするが、日本の漆器は高い品質で中世の頃から南蛮貿易を介して世界中に輸出されている。
縄文時代から長い歴史と時代の文化の影響で地方ごとの多様性を生み出して漆工芸特有の世界をがあります。
とかく美的工芸品と考えられがちな漆ですが、本来の器や箱に塗ることで、漆の塗布面は堅く、なおかつ柔軟でもあり、現代の化学塗料よりも強靭で優れた性質をもっています。
そのことで、耐水性、防腐性に優れた塗料であり、接着剤といった機能性を発揮します。
万能素材として漆は多機能性を尊重され、日本では大昔から暮らしを支える道具として重宝して使われてきました。
漆というと一般的には、扱いにくく、剥がれやすいというイメージがありますが、全くといって間違いです。
金継ぎ
以前にご紹介した世界注目されている陶磁器などが割れや欠け、ヒビなどしたときに漆によって接着し金などの金属粉で装飾して仕上げる日本独特の修復技法の「金継ぎ」があります。
詳しくはこちら 日本の伝統「金継ぎ
漆は、乾くのに時間がかかるという特徴があり、そのために1つの漆器を塗り、漆がゆっくり乾くことを活用して、蒔絵や沈金といった漆塗りでの独特の加飾ができることになります。
精製された漆は、茶色かかった透明をしていて、黒以外の色漆の赤色などは、これに顔料を混ぜて色を出します。
ただし、黒色だけは、精製の段階で鉄分を混ぜ、鉄の酸化によって漆自身が黒色に変化したものです。
そのことが理由で、漆の黒色は他の黒色とは異なり、漆しか出せない漆特有の「黒色」ということになり、他にはない黒なのです。
その黒色の深みや光沢のある色を漆独特の黒色として「漆黒」と呼ばれるのでしょう。
日常品の膳や盆、お皿や椀に黒い漆を塗り、さらに朱色の漆をかけた簡素な漆器を「根来」といいます。
鎌倉時代から室町時代にかけて隆盛した禅院の「根来寺」で、寺内で使用するために製作した漆器が有名となり「根来塗」と呼ばれるようになった。
長い年月使用していると朱色の漆がすり減り、剥げていくことにより下地の黒い漆が透けて見える様は日本人の無常感をそそる美しさなのでしょう。
日本の冠たる「漆」は日本全国北から南までいろいろな漆器があります。
木地の加工や塗り方、色の出し方など様々な特徴があるので、よくみつめてみましょう。
参考:isuke、japan house、Wikipedia、