進化し続け親しみある日本の伝統「こけし」
どこの家にもタンスの上やケースの中で、ひっそりとたたずんでいた「こけし」
東北地方の伝統工芸品のこけしが、最近では自由な発想の卯三郎こけしなどの創作こけしが登場して一部でブームになっているとのこと。
このこけし好きは30代の女性を中心に新たな人気が出て「こけし女子」「こけ女」などと呼ばれるまでになっている。
また、海外からも「クールジャパン」を体現する商品として、人気が出ているそうです。
こけしは、前述のように東北地方の郷土玩具です。江戸の中期より後の山深い温泉地で誕生した木製の人形玩具です。
木工用の ”ろくろ” を回しひいて、手足はなく丸い円筒形の胴体に球体の頭が乗っているシンプルな姿をしています。
この木工人形は木地師(轆轤(ロクロ)と呼ばれる特殊な工具を使って、盆や椀、コケシなどを作る職人たちのこと)たちが作られ、温泉地に湯治に来る人たちのお土産として、また子供達へのおもちゃとして広く制作されるようになったとの説もあります。
こけしの誕生と系統
こけしの誕生には、諸説あり、東北地方固有の信仰に関係している説やこの地域で作られてきたおしゃぶりなどの玩具が変化していったなどがあります。
こけしは下記のように区別されています。
- 「伝統こけし」:江戸時代から続く工芸品。
- 「新型こけし」:形や絵付かが自由に表現されている。
- 「創作こけし」:作家の独創性のあるもの。
です。
こけしに赤い色が多いのは、当時、赤い染料を使った置物は魔除けとして、縁起物として好まれていたので、赤を使い可愛らしさを出し、子供たちのよき遊び相手にもなり幸せを守る玩具となり全国に広まったそうです。
こけしの名前の由来と系統
こけしが誕生した当初は共通した名前はなく、木で作られていたので「きでこ」、芥子人形(けしにんぎょう:芥子粒のように小さい人形のこと)からきた「こげす」、魔除けの人形這子(ほうこ:這い這いする子供をかたどった魔除けの人形のこと)からきた「きぼこ」など各地での呼び方が異なる。
しかし、あまりにも名称が多すぎて不便であったので1940年(昭和15年)に、こけし職人や愛好家などの関係者が集まり、ひらがな3文字の「こけし」に統一されたのです。
伝統こけしには産地ごとの特徴があり、それぞれに「系統」に分かれていて、十余の数の分類に区分されています。
- 津軽系こけし:青森県温湯温泉、大鰐温泉
1本の木から頭と胴を彫り出す、作り付け構造で、胴の模様は、ねぶたのダルマ絵や津軽藩の家紋、牡丹の花模様など。様々な表現の型や模様があるのが特徴。 - 南部系こけし:岩手県盛岡、花巻温泉
頭と胴が別々に作られているはめ込み型で、胴の中央がふくらんだものや裾がくびれたものなど様々。頭はゆるく固定されて、ぐらぐら動くのが特徴。 - 木地山系こけし:秋田県木地山、川連
胴と頭が1本の木から作られる、作り付け構造で、頭は小さめで細長いらっきょう型。
胴は太めのストレートで、しま模様の着物を着ているのが特徴。 - 鳴子系こけし:宮城県鳴子温泉
頭部を胴にはめ込む構造で、首を回すとキイキイと音が鳴るのが大きな特徴。
目は上のまぶただけが描かれ、鼻は丸いことが多い。 - 作並系こけし:宮城県木作並温泉、仙台市
頭頂部は平たく胴は細め。中には裾がすぼまっている形もあり、バランスが悪いので台座が付いていることもある。胴が細いのは、子どもが持って遊んでいた名残だといわれています。 - 遠刈田系こけし:宮城県遠刈田新地、遠刈田温泉、青根温泉、秋保温泉
模様の華やかさが特徴で、頭部には赤い放射状の「てがら」と呼ばれる華やかな絵柄が描かれています。 - 弥治郎系こけし:宮城県白石市弥治郎、鎌先温泉
目は上まぶただけが描かれ、頭頂部にはカラフルなろくろ線の模様を描くのが特徴です。 - 肘折系こけし:山形県肘折温泉
上下のまぶたが描かれた三日月形の目に、唇もはっきりと赤く主張しています。 - 山形系こけし:山形県山形市周辺
温泉地ではなく市の中心部で作られて、小さい頭と細い直胴が特徴 - 蔵王高湯系こけし:山形県蔵王温泉
差し込み型の頭に、髪型は「てがら」の模様かおかっぱ。頭も胴体も大きめでどっしりした印象です。
- 土湯系こけし:福島県土湯温泉、中の沢温泉、飯坂温泉、岳温泉
細身のボディラインで女性らしい姿です。
などがあります。
子供の頃から、ずっと一緒にいたこけし、木のぬくもりや地域の表現が見ていて飽きませんね。
産地に訪れた際は、その魅力あふれるこけしを手にとって、よく眺めてみてはいかがでしょう。