虫の音が聞こえるのは
虫の音が聞こえる正体は
あのノイズ(雑音)はなんだと言いました。
網戸の向こうから聞こえてくる虫の音に外人客から質問が来たのです。
スタンフォード大学の教授だった彼は、その虫の音をノイズ(雑音)としか聞こえなかったのです。
日本人は秋の枯れ葉散るころに聞く虫の音に、郷愁を覚え、故郷を思い、心を洗われ、心を沈ませる季節に涙を浮かべる人も少なくありません。
日本には虫の音に聞き入る文化があります。
昔から子供たちが、親しんできた童謡の「虫の声」
あれ松虫が鳴いている
チンチロ チンチロ チンチロリン
あれ 鈴虫も鳴き出した
リン リン リン リン リーン リン
秋の夜長を鳴きとおす
ああ おもしろい 虫の声
出典:文部省唱歌より
このように、マツムシ、スズムシ、コオロギ(キリギリス)ウマオイ、クツワムシの虫の音色を言葉に表す「聞きなし」で伝えている。
よく知られる虫の種類
- バッタ目
- エンマコオロギは、「コロリーコロコロリー」と鳴く
- スズムシは、「リ゛ーー・リーーン・リーーン・リーーン」
- マツムシは、「チン・チロン」
- ツユムシは、「ピチッ・ピチッ・ピッピピチッ」
- ニシキリギリスは、「ギーース、ギーース、チョン!」
- クツワムシは、「ガチャガチャガチャ」
- ハタケノウマオイは「シッーチョ・シッーチョ」
- セミ類
- アブラゼミは、「ジリジリジリジリジリ……」
- クマゼミは、「ワシワシワシ……」
- ミンミンゼミは、「ミーンミンミンミンミー」
- ニイニイゼミは、「チィーーーー」
- ヒグラシは、「カナカナカナ……」
- ツクツクボウシは、「オーシ・ツクツク・オーシ」
出典:Wikipedia、
こどもの頃に、友達と早く起きてカブトムシを初めキリギリスやクワガタなどを採りに行きました。
家に持ち帰り、良く眺めたものです。
この伝統は、いにしえの頃までさかのぼります
万葉集より
- 夕月夜心もしのに白露の置くこの庭にこおろぎ鳴くも
(しのに:しっとり濡れて、しみじみした気分で) - 庭草に村雨降りてこほろぎの鳴く声聞けば秋づきにけり
- あきの野に道もまどひぬまつ虫の声するかたに宿やからまし
などたくさんの歌が詠まれています。
明治天皇の御歌より
- さまざまの虫のこゑにもしられけり生きとし生けるものの思いは
(マツムシや鈴虫などさまざまな虫がさまざまな声で鳴いているそれらの声に「生きとし生けるもの」のさまざまな思いが知られる)
という、人も虫もともに「生きとし生けるもの」として、同じで「声」や「思い」を持つという日本人の特有の自然観が表われています
東京医科歯科大学の角田忠信教授の研究によると
自然音を言語脳で受け止める日本人の生理的特徴が発達した。
それにより、日本語の言語学的特徴(擬声語、擬音語が高度に発達)と自然物にはすべて神が宿っているという日本的自然観の3点が日本人独特の「虫の音に耳を傾ける文化」という自然に対する敬虔な姿勢が根付いたものと思われます。
和歌、俳句、小説、能楽、謡曲、舞踊(京舞)、音楽、絵画などたくさんの文学に多用されている「虫の音」は、日本人のDNAに潜む「もののあわれ」の感性なのでしょう。
参考:MAG2NEWS、Wikipedia、国家の品格(藤原正彦著)、日本人論(渡部昇一著)