場当たり的に情報を取り出す脳
記憶の限界
認知心理学の分野でのここ40年におよぶ実験の結果を見る限りでは、人間の物事を知り、考えたり判断したりする能力である知性は有限であることが判明している。
限界の多くには人間の記憶というものの性質が原因とされている。
私たちは、脳に情報を取り込み、それを蓄積するのはとても得意としているが、一方でたくさんの情報を蓄えた脳から取り出すのが苦手としている。
例えば、中学や高校時代の卒業アルバムを引っ張り出して、写っているその学級の人については数十年経過しても見れば思い出すことができますね。
ところが、一昨日の夕飯に何を食べたか、驚く事には昨日の朝食すら、すぐには思い出せないことがある。
記憶とはまったく当てにならないもので、見てないことも見たように記憶し、見たことも見てないように記憶することがあり、そのせいで誤った目撃証言がなされ、無実の人が刑務所に入ることもある。
夫婦のあいだでも、記念日を忘れ、お互いの誕生日を忘れてしまうところから夫婦喧嘩に発展することがありますね。
これは信じられないのですが、飛行機から飛び降り空中散歩を楽しむ、あのスカイダイバーは時々パラシュートを開かせるためのリップコードプル(引く)を引くのを忘れることがわっかっている。
スカイダイビングでは、死亡事故の原因の約6%がリップコードを引くことを忘れた事故だそうだ。
全くの驚きで、死につながることをどうして忘れるのかな。空中遊泳に陶酔してしまうのか。
コンピュータのの記憶能力
コンピュータの記憶能力が人間よりもはるかに優れている点は、コンピュータを作り上げてきた初期の科学者たちが、生物の進化が決して実現し得なかった記憶手法の個々の情報すべてを記憶領域中の決まった場所に蓄積・保管するという方法を採用したからです。
これにより、簡単に言うとどの場所にどの情報が保管されているという地図が作れるようになった。
コンピュータの記憶装置に対し、人間の記憶には地図のようなものはなく、情報の取り出しは非常に場当たり的に行われている
今すぐ必要な情報を確実に探し出すのは苦手で、何かのきっかけによって偶然、出てくるのを待つという不確実な方法しかできない。
私たちの記憶は、コンピュータ、あるいはインターネットのデータベースのように体系的には利用できず、至って信頼性が低いといってよい。
引用:ニューヨーク大学・ゲイリー・マーカス
覚えた場所で記憶が変わる
人間の記憶には、覚えた時の状況と強く結びついている、という特徴がある。
例えば、スキューバダイバーが水の中に潜り、水中で言葉を覚えたとすると、その言葉は陸の上でよりも水の中のほうが、よく思い出せる傾向が実験で確かめられている。
たとえ水に関する言葉とは全く違った言葉を学んだとしても、同じ結果になる。
逆に困ることもあり、覚えたときと異なる状況に置かれるとせっかく覚えた言葉や情報を取り出すのが難しくなる。
ということは私たちが学んできた場所は学校であり、教室です。
今は塾がありますが主には教室で学ぶわけですが、学んだことを活かすのは教室とはかけ離れた現実の社会です。
学校教育にとっては非常に大きな問題です。
これが一番怖ろしい
そして何よりも怖ろしいのは、
人間は自分の信念に合う物事はよく覚えるが、信念に合わない物はあまり覚えないという事実です。
信念とはいわずとも、興味のある物、好きなこと、関心を寄せていることなどは覚えやすく、そうでないものは何度聞いても覚えられません。
2人で同じものを見ていても互いの記憶が食い違ったりすることはよくあるケースです。
これは、2人の考え方の相違が原因であることが多い。
考え方が違えば注目する視点も違ってくるし、当然記憶するところも違ってきます。
できれば、他人の意見(記憶)も取り入れるべきですが、どうしても自分の考えに合わないことは忘れたまま思い出さずにいることが多く、他人の意見を聞き取り入れるには相当の努力が必要です。
これがまさに弱点(確証バイアス)で、この弱点が自分にあることを認識することがとても大事です。
自分とは考えの違う他人が何を記憶するかを想像してみるの良いでしょう。
この「確証バイアス」は認知バイアスのひとつで、今回は心理学から見た場合です。
実社会においては、政治、SNS,ファイナンス、医療、メンタルヘルス、司法、科学等々多岐にわたってます。
ウエイソン選択課題
最後に有名な「ウェイソン選択課題」のゲームを試みてください
図のような4枚のカードが示され、「偶数が表に書かれたカードの裏は赤色である」という仮説を検証するにはどのカードをひっくり返すべきかと尋ねられたとする。
この回答として多いのは「8と赤色」あるいは「8」のカードをひっくり返すというものであるが、これらは十分な仮説の検証に失敗している。
この仮説が否定されるのは「表面に偶数が書かれており、かつ、裏面は赤色ではないカード」が存在する時のみである。したがって赤色をひっくり返し奇数であったとしても仮説と関係ないが、茶色のカードをひっくり返して偶数ならば仮説が否定されるため、仮説の検証としては「8と茶色」のカードをひっくり返すのが正解となる。
「赤色」をひっくり返し偶数であるのを確認するのは仮説を支持することのように思えるが、実は仮説の検証には何ら寄与していない。
多くの人がこのような問題に誤答するという結果を説明するためのものとして、ウェイソンは確証バイアスを用いた。
参考:Wikipedia、天才科学者はこう考える(ジョン・ブロックマン編)