脳は鍛えることができる
会話の中で「あれ」「それ」という言葉が行き来することが多くなった。これは脳の処理スピードが遅くなったために起こる現象で、前頭葉の機能低下によるものです。
ロンドンのタクシー運転手を対象にした有名な調査により、タクシー運転手の脳内の記憶の形成に関わる特定の領域は、ほぼ同じ年齢でタクシー運転手はない人と比べると物理的に大きいことが明らかになった。
この結果は、ロンドンのバスの運転手には当てはまらなかったことから、タクシー運転手はロンドンの多数の通りを記憶する必要があるので、それにより脳の海馬(かいば)が変化したとの結論が指示されるようになった。
脳の海馬とは
大脳皮質側頭葉の奥深くにある大脳古皮質の一領域。
引用:コトバンク
エピソード記憶等の顕在性記憶の形成に不可欠な皮質部位である
成長できる脳
この調査結果により、大人になってからでも脳のどこか1ヶ所を集中して使えば、その大きさやおそらくは容量も大きくなりうるという見解を後押しするものです。
集中して使わなくとも、一時的に鍛えたり単純に頭の中で想像したりするだけでも効果はあるようです。
認知症やアルツハイマーが増加傾向にある中で、希望の持てるうれしい調査結果ですね。
目隠しをして過ごしていると、触覚(点字の)識別が改善するという研究報告がいくつもある。実験参加者の脳をスキャンしたところ、1日あたり1時間強の目隠しを5日間続けただけで、触覚や聴覚に刺激を受けたときの視覚野(しかくや)の反応が上がったという。
脳の適応力が生涯にわたって消えることはない。ことはもはや疑いようがない。
逆に脳は「使わないなら失うぞ」という警鐘を鳴らしながら突き進んでいるのです。
私たちにとって、こんなありがたいことはありません。だって、少し鍛えることで脳が成長をするわけですからね。
ならば、適応力を的確に高めて、脳を成長させようではないですか。
現代は、豊富な情報(情報過多ですが)、さまざまな刺激、ベースアップ、マルチタスク、多様性を可能にするデジタルの存在が求められているわけですから、それらを認知能力の拡大に活用しようではありませんか。
青年期の精神衛生に詳しい精神科医のスタン・カッチャー博士はデジタルテクノロジーが脳の発達に及ぼす影響について調べた結果、次のように語っている
「新しいテクノロジーにさらされることで、ネット世代(ティーンエイジャーや若年青年)の脳の容量が従来の限界を押しのける可能性があると示す証拠が現れつつある」
オール A の女子学生が宿題と同時にオンライン上で別のことを5つやっていても、実際に複数のタスクを同時にこなしているわけではない。
彼女のワーキングメモリと切り替え能力が優れている。
私は、メールを読みながら iTunes を聴くことはできないのですが、この学生さんならできることでしょう。
彼女の脳は、いわゆるデジタル時代の要求に対処するように配線されているからです。
イメージトレーニングも同じ効果
ある調査で、Aグループには5本の指を使った簡単なピアノの練習をしてもらい。Bグループには頭のなかでまったく同じように一音ずつ指を動かし手ピアノの練習していると考えてもらう実験が行われた。
すると、AグループもBグループの運動皮質にも変化が現れた。
実際に指を動かしてピアノを弾いたグループと同じくらいに頭の中だけでピアノを弾いたグループにも大きな変化が起きたのでした。
本を読んでいても集中できないと感じる人は、記事の見出しや要約だけでなく、記事の全文を1日に何本か読むようにするだけで、集中力が高められる。
外科医になりたい人は、ゲーマーになるか、電車の車内で手術の脳内リハーサルをするといい、リハーサルによって、物理的に身体をうごかしたときに生じるほどの大きな変化が運動皮質に起こる。
スポーツ選手がよくやる、イメージトレーニングはとても大事だと分かります。
アインシュタインの記憶の法則
脳を鍛える方法はたくさんありますが、記憶力が下がったと感ずる人はアルベルト・アインシュタインが使っていた記憶の法則を目的に合わせて応用するといいようです。
アインシュタインは、なぜ自分の電話番号を電話帳で確認するのかと尋ねられたとき、調べられない事柄しか覚えないようにしていると答えた。
この他にもアインシュタインは「覚えておくべきこと」「覚えなくてもいいこと」を意識しており、ある記者からの取材では、光の速度を答えられなかったという逸話もあります。
今は、覚えることが多すぎるほどある時代です。文明の夜明けから2003年の間に収集されたデータの量は、5エクサバイトだった(1エクサバイト=100京バイト)。
それが今では、2日ごとに5エクサバイトのデータが収集されている。さらに増え続けている。
認知の武器として最も強力なものはデザインする力とトレント大学学長のドン・タブスコットは分析している。
知識の取得ではなく、デザインの原則や決まりごとを思考の形成に活用する力のことで、デジタル時代にふさわしい効果的な考え方、記憶の仕方、コミュニケーションのとりかたをデザインすることです。
人間が記憶できる容量には限界がある。ならば、「記憶にとどめるものととどめないものの基準を設ければいい」のではないでしょうか。
意識を持ってた試してみてはいかがでしょうか。
参考:天才科学者はこう考える(ジョン・ブロックマン編)