春はほころぶ花が待ち遠しいですね
春の訪れとともに、「梅」や「桜」が一斉にほころび始めます。
早く、そんな日が早く来ないかなと歌い上げたのが「春よこい」でした
大正時代後期に作曲された童謡。
「春よこい」
春よ来い 早く来い
あるきはじめた みいちゃんが
赤い鼻緒の じょじょはいて
おんもへ出たいと 待っている
春よ来い 早く来い
おうちのまえの 桃の木の
つぼみもみんな ふくらんで
はよ咲きたいと 待っている
歌詞の「じょじょは草履」「「おんも(表・外)」のことで、みいちゃんは作詞家・相馬御風(そうま ぎょふう/1883-1950)の長女「文子(ふみこ)」がモデルとされている。
「あるきはじめた」ばかりのみぃちゃんの視点を通して、雪に閉ざされた越後の冬で静かに春を待ち望む人々の強い思いが伝わってくる。
作曲は、『鯉のぼり』、『浜千鳥』、『雀の学校』などで知られる弘田 龍太郎(ひろた りゅうたろう/1892-1952)。
ほころぶ
春は花が開くことが話題となり「花がほころび始めました」と喜び、春の入学試験の合格発表やその後の入学式などでは「喜びに顔をほころばせていました」など、単に季節だけでなく人生の春も彩る言葉の一つですね。
もともと、洋服などの縫い目が「ほころぶ・ほころびる」などと使われていたものが、花の蕾がほころぶこととでは、固いものが柔らかくなるという共通点があります。
それで、次第に花がほころぶなどに応用されたようです。
よく「笑顔がほころぶ」などの表現をたまに見受けますが、これは、一見良さそうに感じますが、実は
「顔がほころぶ」の間違いです。
笑顔は「頬」や「口元」、「唇」がほころんで「笑顔」ができます。よく考えれば、笑顔はもうはほころんでいる状態ですよね。
極度の緊張によって固まっている表情が、その緊張を解くことによって柔らかな表情になります。また、嬉しいことがあると顔にまで伝わってきて顔がほころびます。
- ほころぶは「古今和歌集」にも詠まれてます。
「青柳の糸よりかくる春しもぞ乱れて花のほころびにける」紀貫之
春になると、各地から桜の便りが届き始め、花がほころび、それを見ている人々の顔も思わずほころばせる。
- 『拾遺和歌集・しゅういわかしゅう』などの和歌にも
「吹く風にあらそひかねてあしひきの山の桜はほころびにけり」よみ人しらず
吹く風に、こらえきれずに あしびきの山のさくらは ひらきはじめて。
- 俳句にも詠まれてます
「糸桜ほころび空気色めけり」児玉一心
厳しい寒さに、じっと耐えて暖かさを感じ、春呼ぶ花のつぼみがじわじわとほころんでくるのに気づく時は思わず顔がほころびますね。
美しい花の季節の到来を実感することをよろこび、明るく暖かい季節がきているとつい微笑みを浮かべてしまいそうですね。
参考:ことばの意味辞典