深刻な海のプラゴミ「ゴーストギア」とは
ゴーストギアとは、
日本語にすると「漁具の幽霊」という意味になり、持ち主がいなくなり海中を延々と漂う漁網を幽霊に喩えた言葉です。
海に放棄され、逸失し、または、投棄された漁具のことを指します。
ゴーストギアは、漁業から発生するプラスチックごみで海洋生物に最も致命的な影響を与える国際的な環境問題のひとつです。
WWF(世界自然保護基金)は、日本語版のレポートでこの言葉を通じて対策の必要を訴えた。
「ゴーストギアは、最も危険な海洋プラスチックごみである」
「直ちに行動を」
海洋に流出したプラスチック製の漁具は、無差別に海洋生物を捕獲する「ゴーストフィッシング」を引き起こすことで、海洋生物や海洋生態系に深刻な被害をもたらし、社会や経済にも悪影響を与えている。
この海洋に1億5,000万トン存在するとされるプラスチックごみの少なくとも10%は、漁業から発生したゴーストギアです。
毎年新たに50〜100万トンの漁具が海に流失していると推定されています。
調査によると全世界で使用されている全漁網の5.7%、籠や壺などの仕掛けの8.6%、全ての釣り糸の29%が海洋に流出していることがわかりました。
太平洋ゴミベルト
アメリカのハワイ北西部ミッドウェー環礁付近の北太平洋上で、ロープやブイをはじめとする大量の漂流ゴミが北太平洋循環の海流等の影響で集まっている海域のことです。
その面積は日本国土の約4倍もある世界で最も大きな海洋プラスチックのたまり場です。
太平洋ゴミベルトでは、漂うプラスチックごみの46%が漁業から発生した漁網、延縄、ロープなどのゴーストギア等で占められていると推定されている。
残念なことに、この太平洋ゴミベルトでは文字が確認できるプラスチックごみの約1/3が日本語表記だった。
ゴーストギアによる海洋生物に与える影響は海洋ごみに中でもとても深刻です。
漁具がいったん海に流出すると、その機能を失うまで数十年、数百年もの期間が必要で、そのため混獲を続けます。
(混獲:漁業の際に、漁獲対象の種とは別の種を意図せずに漁獲してしまう、もしくは同種の間においても、意図していたよりも小さい個体や、幼体を捕獲してしまう状況のこと。)
引用:Weblio辞書
これにより、世界中の海洋哺乳類の66%、海鳥の50%、そして海亀にいたっては、すべての七種が深刻な影響を受けていることが明らかになっている。
また世界で唯一メキシコのカリフォルニア湾北部に生息しているコガシラネズミイルカは流出した違法な刺し網による混獲で個体数が10頭になるまで減り続け、危機状態の絶滅寸前です。
世界的な大問題でありながら、なかなか解決策が見当たらず、国際組織や各国政府に働きかけゴーストギアを含むプラスチックごみの発生抑制と対策を行うための包括的な国際協定や法制度を目指しています。
プラスチックゴミというと、レジ袋やスプーン、各種プラスチック容器を思い浮かべますが、日本でも「漁網・ロープ」は最大の「海のプラごみ」なのです。
問題解決として
そこで日本のプロジェクトとして、企業の連携で技術を共有し合い、使い終わった漁網を漁業者から集め、リサイクルをします。
まずは、トートバッグにリサイクルすることに成功しました。
一般社団法人のリサイクル会社では、現在30社の参画を得て、製造から販売、リサイクルまで本格的に始動し、将来は日本の漁網をすべてリサイクルできるようにと取り組んでいる。
世界各国でも、問題の解決に向けて動き出し、G20の環境問題の共同声明には「ゴースト・ギア」の言葉が盛り込まれた。
各国で海のプラスチックごみの問題について国際的な枠組みや対策の強化を検討する場が立ち上がっています。
日本も環境省と水産庁などが連携をとり漁具の回収などについて検討を始めている。
私たちも「これ、ひとつぐらい捨てても大丈夫」などと思わずに、このプラスチックが海を漂い、もし海亀が食べたらどうなるのかを想像することが大事になりますね。
参考:WWF JAPAN、PR TIMES、NHK、Wikipedia、