俗説の物を忘れるという茗荷の話の由来
東京の小石川、小日向に「茗荷谷」という地名があります。また、丸の内線に「茗荷谷」という駅もあります。
この地名は、江戸時代に牛込早稲田から小石川にかけて広がる茗荷畑を見下ろす谷だったことに由来しています。
ミョウガ(茗荷)
茗荷は、温帯の東アジアが原産で、ショウガ科のショウガ属でショウガの仲間です。
学名は「ジンギベル ミオガ」で「ジンギベル」はショウガ属をあらわし、「水牛の角」の意味を持ちミョウガの「オシベの形がツノに似ている」と言われたりします。
種小名(生物の二名法による学名で、属名の後につける名称)の「ミオガ」は、日本語の「ミョウガ」で、和名が種小名にそのまま使われているのは大変珍しいことだそうです。
英語でも「ミョウガ・Myoga」と呼ばれたり「ジャパニズ・ジンジャー」と呼ばれたりします。
ジンジャーはショウガのことで「日本のショウガ」ということです。
江戸時代に、このショウガが日本からヨーロッパに紹介されたためです。
麺類や冷奴、漬物の薬味、天ぷら。酢の物、味噌汁の具などに使われ独特の香りが特徴で利用されている。
ミョウガを食べると物忘れがひどくなると言われるけど、これは俗説で根拠はありません。
ミョウガの漢字名には、次のような話が語り継がれています。
お釈迦さまと弟子の話
仏教を開いたお釈迦さまの弟子に、チュッラパンダカという物覚えが悪く、物忘れのが激しいお坊さんがいました。
自分の名前すら忘れてしまうので、自分の名前を書いた名札を首からかけさせられました。
ところが、チュッラパンダカは自分の首に名札がぶら下がっていることも忘れ、死ぬまで名前を覚えられませんでした。
チュッラパンダカがなくなり、そのお墓から見慣れない草が生えてきました。
その草に「自分の名前を荷(にな)って苦労したお坊さんの草」という意味で「茗荷」と名付けられました。
生前、チュッラパンダカは修行に熱心でお釈迦様から布を与えられ、「この布切れを持って来る人の衣のほこりや履物の泥を払いながら ”チリを払え、アカを除け” と唱えなさい」と命じられました。
それから、毎日、チュッラパンダカはその布でお釈迦様の教えを聞きにやってくる弟子たちの衣や履物のほこりや泥をぬぐいました。
毎日毎日、来る日も来る日もチュッラパンダカは休むことなく、心を込めて汚れを拭うのです。
そのまじめさは他のどんなに優秀な弟子にも負けないものでした。
それから何年かたち、チュッラパンダカは考えました。「私が毎日唱えている ”チリを払え アカを除け” のチリやアカとは一体なんだろうと。
本当に除かなければならないものは、心の中の ”チリやアカ” ではないだろうか?
チュッラパンダカは、手に持っている黒く汚れた布を眺めながら「この布、初めは綺麗なものだったが、いつの間にかこんなに汚れてしまった」。
「人の心もこの布と同じだ、私は、心のチリやアカこそ覗かねばならないのだ」と心から思った。
すると、お釈迦様は「チュッラパンダカよよく気がついたね、汚れているのはその黒い布切れだけではないのです」。
「外に向いている目をうちに向け、心の中のチリやアカを除き去ることこそが大切なのです」
とおっしゃり、チュッラパンダカを高く評価しました。
引用:ほとけさまが伝えたかったこと(岡本一志著)
ミョウガは、太陽の光があまり当たらない場所で、夏に芽を出し、赤い皮に包まれその中にはツボミが集まっています。
それが、「ミョウガの子」といわれ私たちの食用となっています。
独特の香りは「ビネン」と言って「神経の興奮を鎮め、ストレスを緩和する効果がある」といわれます。香りを楽しみながら、このような話を思い出してみてはいかがでしょうか。
参考:ほとけさまが伝えたかったこと(岡本一志著)、Wikipedia、旬の食材百貨