日本の神木の巨樹・巨木と神事に大切なサカキ
子供の頃に家の中には仏壇と神棚があった。
毎朝、父や母が仏壇に水やご飯をお供えし、神棚にも水やお神酒(みき)、御榊(おさかき)をお供えしていた。
サカキ
神棚に供えるサカキは、古くから神事に使われる、常緑の中高木。漢字では「榊」であり、まさに神様とつながりがある植物として考えられてきました。
大きな木や岩などには、昔から神が宿ると伝えられてきて、その近くの周辺には常緑樹を植えることがよくありました。
サカキは、関東以西に分布する照葉樹(冬でも落葉しない広葉樹で、葉の光沢の強い深緑色の葉を持つ樹木)で、ツバキ科の常緑樹。
とくに葉が艶やかで互生(くきのふしに1まいの葉がたがいちがいにつくこと)していて、とても美しいです。
- サカキに、とくに、その葉に罪穢れを祓う霊力がある。
- カミとの仲立ちをする霊力がある。
と神事や神楽を通じて一般にも周知されることになった。
備中神楽と榊舞
岡山県の備中神楽には、「榊舞・さかきまい」がある。
備中神楽は中世系の白蓋神事(びやつかいしんじ)や託宣神楽などと、近世系の神代神楽(じんだい)を合わせて伝えている。一般的には神代神楽がよく知られている。
このような備中神楽が演じられるときに、それに先立って「神殿(こうどの)」(舞台のこと)を潔斎(心身を清めること)するのが榊舞です。
舞手が榊の小枝を手に持って舞い、はやし太鼓で唱えごとをしてサカキの葉を撒いて祓い清める舞です。
諸説ありますが、サカキの語源は「栄樹」です。そして、それは、常緑樹の総称でした。
その中でもサカキがもっとも使われたようで、サカキに対しての神聖にして清浄なイメージが定着し、「榊」という字があてられたのではないかということです。
依り代
心霊が依り憑く(よりつく)対象物のことを「依り代・よりしろ」と呼び、主に樹木・岩石・動物・御幣などをいう」
常緑樹のなかでも、光があたると神々しく輝いて見えたり、たおやかにゆれたりする。それが、依り代の依り代たるところでもあります。
巨樹や巨木には1000年以上も経った神木が多い。それは、それぞれは長い年月を耐えて育った老樹であり老木です。
その風姿が神々しいし、若い木とは違った強い生命力がある。誰もが認めるその風貌から神木としたのではないでしょうか。
その巨樹や巨木といわれるものの中に、国が指定する特別天然記念物・天然記念物だけでも、250件以上を数え、それ以外の巨樹・巨木も全国に散らばってあります。
そのうちの多くが神木とされて、その数は何千本なのか何万本なのか検討がつかない。
例えば
- 十二本ヤス(青森県金木町)
地上3メートルのところで枝分かれし、12本の支柱となって天をつく。
昔、魔物退治に行った若者が、神通力を持った白い大ザルを殺してしまい、そのたたりを恐れた村人がヒバの苗を植えて供養したことにはじまる。 - 筏の大スギ(秋田県山内村)
比叡山三十番神社の境内に、がっしりとした主幹からのびた大スギがまっすぐ天をつく。地元では、「番神(ばんしん)の大スギ」と呼ばれ祀られている。 - 三嶋大社のキンモクセイ(静岡県三島市)
樹齢1200年と伝えられる。「二度咲のモクセイ」としても有名で、1度目は9月上旬から中旬にかけて、2度目は9月下旬から10月上旬まで木全体が黄金色に染まる(国指定天然記念物) - 大山祇神社のクスノキ群(愛媛県大三島町)
大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)は、瀬戸内海に浮かぶ広大な境内にクスノキの巨木がそびえ立つ。樹齢2600年、根周りが20メートルもある大クスが目立つ。他にも日本最古のクスは樹齢3000年といわれている「能因法師雨乞いのクス」などがある。(国指定天然記念物)
などが全国にたくさんあるのです。
意外とあなたの近場に巨樹・巨木があるのではないですか。
注意して散歩がてらに見てはいかがでしょうか。
参考:DOMANI、社をもたない神々(神崎宣武著)