精霊トンボは なぜ全滅しても毎年日本に来るのか
精霊トンボは赤とんぼではない
精霊トンボはお盆のころになると日本各地で成虫となり群れて飛ぶのが目立つようになるそのため祖先の霊を乗せて帰ってくると言われる。
地方によっては「盆とんぼ」などとも言われご先祖様の使いとして獲らないように言い伝えもある。
精霊トンボの正式名称はウスバキトンボです
薄羽黄蜻蛉と漢字で書くと分かりやすいように、翅(はね)が薄く透明で身体の割りには大きい。
ウスバキトンボは体が朱色のため「赤とんぼ」と間違われるが赤とんぼではない。
トンボが竿の先にとまるのは
♫ 夕焼け小焼けの赤とんぼ とま~っているよ~ 竿の先
ところで、赤とんぼなどが童謡などでも歌われているように、竿の先や枝の先、時には指の先にとまるのは何故だろう。
トンボは変温動物のため秋になると気温が下がるので太陽の光を体に浴びて体温を上げなくてはならい。
出来るだけ体全体に日光を当てて効率よく体温をあげるため、日光の角度を調整しやすい竿の先のような場所を選び止まる習性がある
どこからも日光の光が当たる場所はわかるんですね。
生物の習性はたくましくもあり生きることに徹しているのがよくわかります。
近年は赤とんぼには環境の変化が激しく姿をみることが少なくなっています。
田んぼの排水がよく、冬にはカラカラに乾いてしまい、せっかくの卵が死んでしまいます
田んぼの中の小さな害虫が、米の汁を吸うと米に小さな斑点が残り見た目が悪くなるので
農薬をまきます。
この農薬は人間やイネには毒性が低いけど、昆虫に対しては強い効き目がある。
当然、赤とんぼにもダメージを与えているのではないかと推測されている。
頑張るウスバキトンボ
その一方でウスバキトンボの群れはよく確認されているので頑張っているようです。
ウスバキトンボも、幼虫のヤゴは田んぼで観察される。
しかし、ふるさとは日本の田んぼではなく熱帯原産のトンボです。
毎年、4月から5月にかけて大群で南の国から海を越えて日本に飛んできます。
渡り鳥ではないのに、体調たったの5㎝しかないのに風にも雨にも負けずに飛んでくる
どう考えても限りなく危険な旅となるのになぜ、そんな思いをしてまで毎年旅立つのか
日本にたどり着いたウスバキトンボは、田んぼで卵を産む。
1カ月もすると水田で生まれたヤゴたちは、羽化してトンボになり、日本列島のあちらこちらへ移動して田んぼに卵を産む。
日本列島を大移動するので、田んぼのない都会でも見かけることができる。
都心で赤とんぼを見かけたら、それは、たぶんウスバキトンボでしょう。
祖先を乗せて飛んでいた「精霊トンボ」
お盆が過ぎ秋になりやがて冬へと季節が移り変わっていく。
熱帯生まれのトンボのウスバキトンボは寒さに弱い。
気温が下がると飛ぶ力を失い、落ちて枯草につかまりながらも、凍えて命を終わらせてしまう。
卵を残せなかったものも、卵を残したものも冬の寒さで死んでしまいます。
春の終わりに大陸から日本に渡ってきた子孫も、お盆の空を群れをなして飛び回っていたウスバキトンボも全滅してしまいす。
ウスバキトンボの謎
どういうわけで、毎年、毎年日本を目指して挑戦をしてくるのだろう。
全滅しても全滅してもあきらめない。
悠久の昔から死の旅たちは繰り返されているのです。
自分たちの領域を広げるためなのか。
その、すべては「謎」です。
近年、地球温暖化とともに冬の寒さが和らぎ雪国の積雪も減りウスバキトンボの卵たちが冬を越すことができる日が来るかもしれない。
ウスバキトンボにとってはうれしい限りですが、地球全体にとってはどうなんでしょうか。
参考:生き物の死にざま(稲垣栄洋著)