忘れられない子どもの頃の偉人伝
子供の頃には誰もが偉人伝を読んだことはあると思います。
夏休みの期間の読書感想文の宿題や図書館から 2,3冊を借り、それの感想文などそれぞれだろうが、思い出はあると思います。
例えば当時は、エジソン、シュバイツアーなどがおなじみで、日本人では野口英世が有名ですね。
また「奇跡の人」として1962年に映画化された「三重苦の聖女」と呼ばれたヘレン・ケラーの偉人伝は忘れることはできません。
ヘレン・ケラーは視覚と聴覚に障がいを持ち、会話もままなりませんでした。
この3重苦のヘレンの教育係として住み込みでやってきたサリヴァン先生との葛藤はみごとで、ふとしたきっかけでヘレンが初めて言葉にした「ウォーラー・水」には感動しました。
ヘレン・ケラーはお母さんからある偉人の話を聞いて、発奮して、頑張ったのです。それは「塙保己一・はなわほきいち」という日本人で江戸時代の国学者です。
実は、僕が一番偉人伝で憶えている人がこの塙保己一です。
塙保己一は盲目でありながら41歳から30年以上かけて日本の古書・古本を集めて、『群書類従』という全集を編纂しました。
この『群書類従』は、法律・政治・文学から医学・風俗・遊芸・飲食まで、計1273種のあらゆるジャンルの文献が収められており、『群書類従』なくしては日本文化の歴史を解明することが不可能だ〟とまで言われています。
ヘレン・ケラーが昭和12年に来日した際、かねてから念願であった、塙保己一の銅像や愛用の机に触れ次のように語った。
「塙先生こそ私の生涯に光明を与えてくださった大偉人です。本日、先生の御像に触れることができましたのは、日本における最も有意義なことと思います。手垢のしみたお机と、頭を傾けておられる敬虔なお姿とには心から尊敬の念を覚えました。先生のお名前は、流れる水のように永遠に伝わることでしょう」
引用:法音寺
もう一度、塙保己一を調べてみると
現在の埼玉県本庄市児玉町保木野に延享3年5月5日(1746年6月23日) 生まれる。
幼少の頃から身体は弱く、丈夫ではなかったが、草花を好み、非常に物知りであったという。5歳のときに疳(かん)の病気(胃腸病)にかかったのが原因で、目痛や目やにの症状が出て徐々に視力が弱っていき、7歳の春に失明した。
失明後は、手のひらに指で字を書いてもらい、文字を覚えた。また、手で形をさわったり匂いを嗅いだりして草花を見分けることができた。
目が見えなくなってから和尚や家族から聞いた話を忘れることはなく、一言一句違わずに語ることができたほど、物覚えが良かったという。
15歳で江戸に出て、盲人の職業団体に身を寄せ按摩や針、音曲などに励むも能力の限界を感じ、師匠の雨富検校に学問への想いを告げ、3年間という期限付きで許された。
保己一の学才に気付いた雨富検校は、国学・和歌、漢学・神道、法律に、医学、和歌などさまざまな学問をま学ばさせた。
塙保己一は書を見ることはできないので、人が音読したものを暗記して学問を進めた。
さらに、旗本たちのはからいで、漢学や神道、律令なども学んだ。
1783年、検校(室町時代以降、盲官(盲人の役職)の最高位)となり、和学講談所を開設し、ここを拠点として記録や手紙にいたるまで様々な資料を収集し、編纂したのが『群書類従』です。
また歴史史料の編纂にも力を入れていて『史料』としてまとめられている。この『史料』編纂の事業は東京大学史料編纂所に引き継がれ、現在も続けられている。
子供心に、この世の中にこんなにすごい人がいるのかと思いました。
「尊敬する人は誰ですか」と聞かれると、ほとんど塙保己一と答えていました。
塙保己一の逸話は限りなくあり、
- 有名な学者の平田篤胤、安藤野雁、日本外史を著した頼山陽も保己一の門に入った。
- 『群書類従』の版木を製作させる際、なるべく20字×20行の400字詰に統一させていた。これが現在の原稿用紙の一般様式の元となっている。
- 嘉永4年(1851年)、保己一が編纂した『令義解』に女医の前例が書かれていることを根拠に女医の道が開かれ、荻野吟子が日本初の国公認の女医第一号となった。それまでは医者は男性しかなることができなかった。
- 1921年、昭和天皇が皇太子であったころ、ケンブリッジ大学を訪問した記念に『群書類従』を寄贈することを約束し、実弟である秩父宮が届けた。その他、『群書類従』は、ドイツの博物館、ベルギーの図書館、アメリカの大学等にも贈られた。
- 『群書類従』の版木は、1954年東京都重宝に指定された後、1957年に国の重要文化財に指定された。
- 2016年、本庄早稲田駅前に塙保己一誕生195周年と本庄市・児玉町合併10周年を記念して銅像が建立された。
などなど
歴史学、国学、国文学などのあらゆる学術的な研究に多大な貢献をしている。
とにかく、日本人として高く誇れる偉人であります。