百花の王と百獣の王の「牡丹に唐獅子 竹に虎」とは
京都に行くと南禅寺に足を向けます。
臨済宗南禅寺派の大本山の寺院。山号は瑞龍山。本尊は釈迦如来です。
南禅寺で有名なのは「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」と辞世の句が伝えられている天下の大泥棒の石川五右衛門が歌舞伎「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」で、満開の桜を眺めて言うせりふ「絶景かな、絶景かな」は、この三門が舞台です。
南禅寺の三門は別名「天下竜門」と呼ばれていて日本三大門のひとつに数えられています。
見どころが多い南禅寺ですが、ふと気になったのが方丈の欄間に彫刻された「牡丹に唐獅子、竹に虎」です。
方丈とは、禅宗寺院建築で本堂、客殿,住職居室を兼ねるもの。
引用:世界大百科事典
南禅寺の方丈は、大方丈とその背後に接続している小方丈からなっていて、昭和28年に国宝になってます。
その欄間には、見事な両面透かし彫りの彫刻がされています。
それもそのはず、彫刻士は日光東照宮の「眠り猫」を彫った名工の左甚五郎でした。
「牡丹に唐獅子 竹に虎」と呼ばれる、両面透かし彫りの欄間には、表に虎、裏に竹、そしてもう一つは表に唐獅子、裏に牡丹が彫られています。
「牡丹に唐獅子」は、牡丹に獅子を配した図柄のことで、取り合わせのよいもののたとえで使われます。
昔から、着物の模様や襖絵、絵画、魔よけの札、陶器などに描かれて、なじみの深いものですが、僕は高倉健主演の映画「昭和残侠伝」シリーズが浮かんで来ます。
その、高倉健さんが劇中で歌った主題歌が「唐獅子牡丹」で流行りましたね。
牡丹に唐獅子の組み合わせとは
さて、その「牡丹に唐獅子」ですが、牡丹はあでやかで華やかな百花の王で、唐獅子は、中国の虎という意味で百獣の王です。
この組み合わせには深い意味がありました。
獅子は、百獣に君臨する王といわれます。その無敵の獅子でさえ、ただ一つだけ恐れるものがある。それは、獅子身中の虫です。我身の体毛の中に発生し、増殖し、やがて皮を破り肉に食らいつく害虫です。しかし、この害虫は、牡丹の花から滴り落ちる夜露にあたると死んでしまいます。そこで獅子は夜に、牡丹の花の下で休みます。獅子にとっての安住の地が、そこに在ります。
引用:臨黄ネット
なるほどそれで、絵画や彫刻などに、獅子が牡丹を咥えている図があるんですね。
ことわざにも「獅子身中の虫」(しししんちゅうのむし)があります。
内部にいながら害をもたらす者や、恩を仇で返す者のたとえ。
引用:故事ことわざ辞典
竹に虎の意味は
アジア大陸の広域に生存する虎も、猛獣ですが、その数5千頭から7千頭と、将来絶滅が心配されています。虎は、象には勝てません。群をなした象には、歯が立ちません。そこで逃げこむ処が竹薮の中です。巨体は竹薮に入られず、また、竹薮に入ると、象牙にヒビが入ります。
その昔、杣人は、象牙のパイプを竹薮へは持って入らなかったということです。青竹に象牙は禁物です。従って、虎には竹薮が何よりの安全地帯であり、依所であります。引用:臨黄ネット
これは、仏教からきている言葉で、
「あなたの依所(よりどころ)は、何んですか。 あなたが安心して身を寄せられる安住の地は、どこに在りますか。」
という、メッセージなのです。
南禅寺の方丈の欄間の透かし彫りの小さな空間から発せられているのです。
京都に行って、自分のよりどころを探ることも必要ですね。