時には必要な嘘も方便の「蕎麦屋の出前」
最近は蕎麦屋の出前持ちを見かけなくなりましたね。
ひと昔前は、木製でクサビ止め金具入で丈夫な、そば盆に10人前のそばをかつぎ、自転車の片手運転で配達している姿をよく見ました。
今、思い出すとまるで曲芸の名人だ。
ところが「蕎麦屋の出前」には、慣用句としてよく使われていました。
今でも使っている人がいるので、ご存知の方も多いと思います。
「蕎麦屋の出前」を辞書で引くと
遅れを咎められたことに対して、当てにならない、安易な対応を取ること。遅延している事柄について「今、やってます」のように安易な返答をする様子。そば屋で注文した出前が来ず、しびれを切らして電話してみると、「今ちょうど出ましたんで」と言われる、といった状況になぞらえた表現。
引用:Weblio辞書
実際に良く経験をしました。
取り繕いの慣用句
電話注文で、蕎麦類5,6人前を注文して30分経っても届かないと、どうなっているのかと状況確認や催促をにおわせながら、そば屋に電話をします。
すると必ず「今、出来上がるとこです」「今、出るところです」とか「今、出ました」などと返事が返ってきます。
まだ作り始めていなくても、虚の返答をしてその場を取り繕うことを表すのです。
お客も、またかと思いつつ電話催促をした者は、皆に報告をします。
現代ではネットで宅配バイクの移動状況を確認できるサービスを持っている店もあり、上記のように使うことはできませんが、当時は電話しか確認方法がありませんから「嘘も方便」として ″言い回し” ていたのです。
嘘も方便
昭和時代の出前の食事としてそば屋は一般的で、店の混雑具合や道路の渋滞状況によって注文した料理がいつ届くかはわからないことが多かったのは事実です。
宅配バイクやその後ろに汁がこぼれない器具を装着して、注文先に届ける時間を容易にした出前が日本で普及し始めたのは、日本で最初のデリバリーピザチェーンであるドミノピザの日本第1号店がオープンした昭和末期の1985年(昭和60年)以降だそうだ。
注文を受ける側は、その時たまたま出前注文が何件も重なったり、そのとき団体のお客が入店したり、出前する人はひとりで、しかも、配達先が遠くばらついていたりすれば、出前時間が大幅に遅れることは必至ですね。
注文した側は、催促はしたくはないが空腹とこれからの時間を考えたりして、イラつくばかりになります。
現代のクレームなどにつながらない電話やつながるまでの機械とのやり取り(~の場合は、2番のボタンを押してください。など)、機械的なマニュアルにのっとった対応に怒りは頂点に達します。
誰もが1回はイラつくやり取りを経験をしていると思います。
こんなやり取りなら、「嘘も方便」で、お客に希望を持たせるいい方や納得してもらうやり取りが必要ではないでしょうか。
ネットでの注文が増え続けている現在、クレーム対応はもっと慎重にするべきだと思います。
例えば、故障の修理に伺う日にちの件では、電話保留の許可をいただき「部署にかけ合ってみましたが、訪問日を短くすることができませんでした。大変申し訳ございません」など、さも掛け合ったように報告するだけで「私のために努力してもらった」と納得してもらえます。
だますわけではなく、自分が考えた接客術の「嘘も方便」をもってすれば、お客との親密さもさらに深まります。