高い美意識の中から生まれた日本の「伝統色」
日本の伝統色は、昔から日本は「色」を四季の移ろいの中に美の心を生み出し、繊細な感覚で、暮らしや文化の中に多彩な色を生かし、日本独特の情緒を取り入れてきました。
よく取り上げられるものには
- 平安貴族の女性達の聡明で繊細な感性が産み出した重ね装束の配色美(十二単)
- 中世の武家社会に見られる質実剛健
- 戦国武将達の極彩色に満ちた綺羅びやかな彩
- 山紫水明(日に照りはえて山が紫に見え、川が清らかに流れること。美しい山水の形容)との調和を求めた閑寂な風流
- 侘び・寂びの世界
などなど。
多くの絵画、染織物、陶芸、詩歌、文学として、生活や文化の中に深く息づいています。
自然が織りなす色
自然豊かな日本の四季が奏でる山や川、そこに展開する草花や樹々、野原の彩(いろどり)は空の色とまじりあいながら、何とも言えない色を演出してます。
こうした、環境下の中で日本人の色彩感覚が磨かれたとの説もあるぐらいです。
そのため、花や草木の微妙な色の違いを見分け、美しい自然やそこで育まれた文化が作る微妙な色合いを感じ取り、たくさんの色彩の名前をつけてきました。
このような和の色は、名前も美しく風雅です。こうして日本が誇る伝統色が生まれてきました。
日本の伝統色
日本の伝統色は、ざっと460色ありますが、似た色も多くあるようです。
その中でも、区分すると鼠色(ねずみいろ)、茶色(ちゃいろ)、藍色(あいいろ)系統の色は圧倒的に多い。それぞれに含まれる代表的な色は下記の通り。
- 鼠色(ねずみいろ)には、藤鼠(ふじねず)、素鼠(すねず)、梅鼠(うめねず)など
- 茶色(ちゃいろ)には、鶯茶(うぐいすちゃ)、焦茶(こげちゃ)、海松茶(みるちゃ)など
- 藍色(あいいろ)には、紺色(こんいろ)、納戸色(なんどいろ)など
の色があります。
「四十八茶百鼠」とは
それは、江戸の町人の間で流行ったことで、「四十八茶百鼠・しじゅうはっちゃひゃくねずみ」です。
四十八は“48色”ではなく“たくさん”という意味で、実際には100以上の色があったそうです。
これは江戸時代後期に庶民の贅沢を規制した奢侈(しゃし)禁止令が出されたことによるもので、庶民に「身の程」をわきまえさせるために、絹の着物を着ることが禁止され、木綿と麻のみが許された。
また、使ってよい色も制約が設けられ、それが鼠色、茶色、藍色系統であった。
この禁止令の中でも工夫し、”粋で洒落ッ気” たっぷりな江戸っ子は鼠色、茶色、藍色に少しずつ色の違うバリエーションができ、現在に至っている。
そして、灰色を鼠色としたのは、火事が多い江戸で「灰」という表現が嫌われたためで、こんなところにも江戸っ子らしさがうかがえます。
位と色
昔は、禁色(きんじき)という色が設定され、位が低い人は身につけてはならない色があり、色は位を表すものでもありました。
有名な聖徳太子が制定した冠位十二階では、位によって着用できる色が決められていました。
位の高い人程濃く鮮やかな色を着用することができ、華やかな装いでしたが、位の低い人は黒や白などの落ち着いた色しか着用できませんでした。
「あれ!地味な色が多い」と思っていたけど、派手な色は禁止令が出ていたからなんですね。
それでも江戸人は色を楽しんでいたわけです、やっぱりお洒落だったんです。
日常の中でも伝統色は結構使われています。和菓子のパッケージや着物、浴衣、最近では伝統色を使ったマーカーや筆ペンなども登場してますし、折り紙などにも使われています。
同じ茶色・赤色などでも微妙に違う色もあり、日常でそんなことを意識すると色彩感覚が変わるかもしれませんね。