日本の伝統文化・包む(tsutsumu)
「包む」の第一人者
アートディレクターの岡 秀行(おか・ひでゆき) 1905-1995は、326 人の図案家を結集した全国商業美術家連盟(ACA) を設立するなど、特に独立系の図案家の職能と地位の確立を目指した。
一方で、日本の伝統パッケージの収集と研究をはじめ、1964 年に全国商 業美術家連盟(ACA)の第 1 回企画展として伝統パッケージを展示。
その後、写真集『日本 の伝統パッケージ』(美術出版社、1965 年)や、『包』(毎日新聞社、1972 年)を出版した。
「伝統パッケージ」という言葉を生みニューヨークをかわきりに「包む・TSUTSUMU」展を世界巡回し、10年で28ヶ国に開催をした。
日本人にとって「包む」ということは単なる造形の美しさや、単なる高機能を求めるための装飾ではない。
日本人にとっての「包む」は、日本の伝統文化であり、縄文時代以降、数千年にわたって実用性と芸術と信仰の3つの要素がからみあいながら発達してきたといわれている。
真っ白な紙に包まれた「折形(おりがた)」からはまだ誰にも使われていない清浄さを感じとれます。
「折型・おりがた」とは
六百年以上の歴史を持つ武家社会の礼法の一つで、和紙を使い進物を包んで手渡すやり方と、儀式に使う和紙の飾りを総称する呼称です。
引用:山根折型礼法教室
上級武家のみが使用していた特別な和紙を目的別に使い分ける日本独自の文化です。
「たまごつと」とは
先人達が、物のない時代に貴重なたまごを安全に運ぶ入れ物として、材料の豊富な藁を使い、「卵つと」という専用のケースを作りました
無駄のない造形の「たまごつと」には自然の高機能とそれを見出した人間の感覚を想い馳せます。
引用:山田ガーデンファーム
一枚の風呂敷からは水のような柔軟性を感じとれます。
日本人にとって包みは自然への尊敬と知恵の集合体であり、神との対話であり、見えない意識をかよわせて、相手とより一層深くつながるための言葉でもあります。
- 「たまごつと」:
貴重な卵を保護し、運搬と保存を簡単にした - 「米俵」:
重い米の運搬の負担を軽減した - 「樽」:
円柱をころころ転がして運搬できる
など、いずれも身近な自然素材を知恵を使って、食物などを機能的に包み込むことで、合理的に潤いのある食文化を手に入れてきた。
信仰としての包み
また、まっさらで汚れのない「紙」に「神聖」を見出し、包む行為そのものにも神秘を見出してきました。
- 「お守り」:
小さな袋や箱にご利益のあるお札を包んで身につける - 「おひねり」:
洗米や金銭を白い紙に包み神社や寺に供えたり、ひいきの歌舞伎役者に投げたりする - 「流し雛」:
桃の節句などで、精神の依り代としての包み
などです。
貴族社会や武家社会での礼儀
お祝い・お悔やみ・季節の挨拶といった改まった贈り物では、内容に応じて包み方を変えることで、相手に「礼儀」を示した。
- 「水引」:
神様との結界であるしめ縄から生まれ贈答品の包み紙や封筒などを飾る帯紐で、赤白・金銀・赤金・白黒・黄白などの色があります。 - 「折り形」:
中身によって紙の折り方を変える。 - 「のし」:
薄く切った干しあわびを添えて永遠性を祈る
古く貴族社会や武家社会で整えられた「礼儀」の約束事が、現代の生活までうけつがれている。
日本伝統の礼儀作法が現代の社会でも残って使われているとは、まさに日本文化の伝統ですね。
使う事がうれしくなってきます。
参考:Japan house、目黒区美術館、Fashion press、山根折型礼法教室